
「来年の春には、新しい住まいで暮らし始めたい」。売却を考えるきっかけが進学や転勤、住み替えのように”期限つき”のとき、最初に気になるのは「売れるまでに何か月かかるのか」ではないでしょうか。
この記事では、一般的なケースとして、家の売却にかかる期間を3つの段階に分けて整理し、2026年秋の市場の動きを踏まえて「春までに引き渡したいなら、いつ何をすればいいか」を逆算します。
「売れるまでの期間」は、3つの時間の足し算
売却期間というと「売り出してから買主が決まるまで」をイメージしがちですが、実際には次の3つを足した時間がかかります。
1. 査定を受け、売り出しの準備をする時間
2. 売り出してから、買主が決まる(売買契約を結ぶ)までの時間
3. 売買契約から、代金を受け取り引き渡すまでの時間
このうち1と3は、やることがある程度決まっているため見通しを立てやすい部分です。読みにくいのは2で、ここが価格や市場の状況によって大きく伸び縮みします。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は年に一度、首都圏で「登録から成約に至る日数」を公表しており、中古マンションでは平均3か月前後と紹介されることが多い数字です。ただし、2026年の数値はまだ年間集計が出ていないため、今年に入って長くなっているかどうかはデータ不足です。また平均値なので、早く決まる物件もあれば半年以上かかる物件もあります。
首都圏の中古マンションは、成約が減り在庫が増えている
期間を考えるうえで押さえておきたいのが、今の市場の動きです。
東日本レインズの2026年8月の集計によると、首都圏の中古マンションの成約件数は3,180件で、前年同月比10.5%減と5か月連続で前年を下回りました。神奈川県は808件(同4.3%減)です。一方で、新規に売りに出された件数は15,627件(同9.7%増)、在庫件数は48,235件(同8.2%増)と増えています。平均成約価格は5,129万円で、前年同月比2.8%下がりました。
売りに出ている物件が増え、成約は減っている。買主から見ると「比べる候補が多い」状態です。こうした局面では、相場より高めの価格で売り出した物件ほど比較で後回しにされやすく、買主が決まるまでの時間が延びる可能性があります(どの程度延びるかは物件によって異なり、一概には言えません)。
戸建ては少し違う動きをしています。同じ8月の首都圏の中古戸建ては、成約件数が1,641件(前年同月比1.9%増)、在庫件数は23,277件(同1.2%減)でした。「マンションか戸建てか」で市場の状況が違うため、ニュースの数字をそのまま自分の家に当てはめないことも大切です。なお、川崎市・横浜市に絞った在庫や成約日数の数値は、今回確認できた資料には載っていませんでした。エリアや駅、築年数による違いは、査定の際に担当者に確認してください。
もう一つ、買主側の事情も変わっています。日銀が2026年9月の会合で政策金利を1.25%に引き上げたと報じられ、10月には主要銀行の多くが住宅ローンの変動金利を引き上げました。10年固定は3%台に、フラット35(買取型)の最も多い金利は3.830%になっています。月々の返済額が増えると、同じ年収でも買える価格帯は下がりやすく、買主が価格に慎重になる場面は増えると考えられます。
STEP1:査定と売り出し準備は、書類集めで差がつく
査定を依頼してから売り出すまでは、早ければ数週間で進みます。ただ、次のような準備に時間がかかると、それだけ売り出しが遅れます。
マンションなら、管理規約や長期修繕計画、管理費・修繕積立金の金額、管理会社が発行する重要事項調査報告書など。戸建てや土地なら、境界がはっきりしているかどうかの確認が大きなポイントで、隣地との境界確定測量が必要になると、隣地所有者との立ち会い調整も含めて数か月かかることがあります。住宅ローンが残っている場合は、残高と完済の手続きを金融機関に確認しておく必要もあります。
「売り出してから慌てて揃える」よりも、査定の段階で必要書類を担当者に聞いて先に準備しておく方が、全体の期間は短くなりやすいです。
STEP2:売り出しから買主が決まるまでは、3か月を一つの区切りに
ここがいちばん読めない期間です。目安として意識したいのが「3か月」という区切りです。
不動産会社と結ぶ媒介契約のうち、専任媒介契約と専属専任媒介契約は、有効期間が最長3か月と法律で決められています。3か月たったら更新するかどうかを決めるタイミングになるため、売主にとっても「売り出し価格や販売のやり方が合っているか」を見直す自然な区切りになります。
見直しの材料になるのは、問い合わせや内見の数です。問い合わせ自体が少ないなら、価格や物件情報の見せ方が買主の目に留まっていない可能性があります。内見はあるのに申し込みにつながらないなら、価格と物件の印象にずれがあるのかもしれません。なかなか売れないときの理由については、別記事『売却を依頼された家がなかなか売れない本当の理由』でも詳しく整理しています。
「最初は高めに出して様子を見たい」という考え方もありますが、在庫が増えている時期は、最初の1〜2か月に多くの人の目に触れるかどうかが大切です。売り出し価格は、査定額の高さだけで決めず、近い条件の物件が実際にいくらで成約しているかも確認して決めることをおすすめします。
STEP3:売買契約から引き渡しまでは、1〜2か月程度が多い
買主が決まって売買契約を結んでも、すぐにお金を受け取れるわけではありません。買主の住宅ローン本審査、売主のローン完済と抵当権の抹消、引っ越しの準備などがあり、一般的には契約から引き渡しまで1〜2か月程度を見込むことが多いです。
ただし、これは双方の事情で変わります。買主が今の家を売ってから引っ越す場合や、売主が新居の完成を待つ場合は、引き渡しの時期を数か月先に設定することもあります。逆に、引き渡し日を売主の都合だけで決めることはできないため、期限がある方は売り出しの段階から「いつまでに引き渡したいか」を担当者に伝えておくと、条件の合う買主と話を進めやすくなります。
春までに引き渡したいなら、10月の今は「準備を始める時期」
ここまでを踏まえ、たとえば「2027年3月末までに引き渡したい」場合を逆算してみます。
引き渡しが3月末なら、売買契約は遅くとも1月〜2月には結んでおきたいところです。買主探しに3か月程度かかると見込むと、売り出しは11月〜12月には始めたい計算になり、その前の査定と準備は10月〜11月に動き出すことになります。つまり、今の時期はちょうど準備を始めるタイミングにあたります。
年末年始をはさむ点にも注意が必要です。金融機関や役所、管理会社が休みになる期間は手続きが止まりますし、買主側も年末は動きにくくなることがあります。スケジュールには少し余裕を持たせておくと安心です。
また、売却する年が年内か年明けかで、譲渡所得の税率を決める「所有期間」の判定が変わるケースがあります。この点は別記事『家を売るのは年内?年明け?税金の「1月1日ルール」から考える売却時期』で解説しています。個別の条件によって異なるため、税理士・司法書士・弁護士などの専門家への確認をおすすめします。
期間を延ばしてしまう、よくあるつまずき
一般的に、売却期間が想定より長くなる原因として多いのは、次のようなものです。
一つは、査定額の中で一番高い金額をそのまま売り出し価格にしてしまうことです。査定額は「この価格なら売れそう」という見立てであって、その価格で売れることを約束するものではありません。もう一つは、住みながらの売却で内見の日程が合わず、買主候補を逃してしまうこと。週末だけでも内見に対応できる時間をあらかじめ決めておくと、機会を逃しにくくなります。
そして、物件情報が十分に広がっていないケースもあります。売り出した物件がほかの不動産会社に紹介されにくい状態になっていないか、気になる方は『囲い込みされていないか確認する方法』も参考にしてみてください。
まとめ|売却期間は「売り出し価格」と「準備の早さ」で変わる
家が売れるまでの期間は、査定・準備、買主探し、契約から引き渡しまでの3つを足して考えると見積もりやすくなります。このうち買主探しの期間は市場や価格によって大きく変わり、2026年秋は首都圏の中古マンションで在庫が増え、成約が減っている状況です。
期限がある売却ほど、「いくらで売れそうか」と同時に「どのくらいの期間を見ておくべきか」を早めに知っておくことが大切です。gritでは、川崎市・横浜市の物件について、査定とあわせて引き渡し希望日から逆算した売り出しスケジュールのご相談もお受けしています。急いで決める必要はありません。まずは今の家の状況を整理するところから、お気軽にご相談ください。
