
結婚を機に今のマンションへ移り、前に住んでいた部屋は貸していた。親が施設に入り、実家は空き家になっている。こうした「今は住んでいない家」を売ろうとしたとき、意外と見落とされやすいのが、登記簿に載っている所有者の住所です。
2026年4月1日から、不動産の所有者の住所や氏名が変わったときの変更登記が、法律上の義務になりました。この記事では、一般的なケースとして、売却を考え始めた段階で「登記の住所」をなぜ確かめておきたいのか、何を準備すればいいのかを整理します。
「登記の住所」は、引っ越しても自動では変わらないのか
変わりません。市区町村に転居の届け出をして住民票を移しても、法務局の登記簿に記録された住所はそのまま残ります。登記簿の住所を新しくするには、「所有権登記名義人住所変更登記」という手続きを別に申請する必要があります。
町名変更や住居表示の変更のように、本人が引っ越していないのに住所の表記が変わった場合も、登記簿が自動で書き換わるわけではない、と解説されています。家を買ってから何年もたっている方ほど、登記簿の住所が今の住所と違っている可能性があります。
2026年4月から、住所変更の登記は「義務」になった
横浜地方法務局の案内(2026年10月5日更新)によると、2026年4月1日から、不動産の所有者として登記されている人の住所・氏名(法人なら名称)の変更登記が義務化されました。ポイントは次のとおりです。
- 住所などが変わった日から2年以内に変更登記を申請する
- 2026年4月1日より前に住所が変わっていた場合も対象で、その場合の期限は2028年3月31日
- 正当な理由なく申請を怠ると、5万円以下の過料が科される可能性がある
- 法人も対象になる
「過去の引っ越しは関係ない」と思われがちですが、以前に住所が変わったまま登記を直していない場合も、猶予期間のうちに手続きが必要になります。なお、2024年4月からは相続登記も義務化されており、相続した家の登記を済ませていない場合は、そちらの手続きも関係してきます。
家を売るとき、住所がずれていると何が起きるのか
売買の決済の日には、売主から買主へ所有権を移す登記(所有権移転登記)を行います。このとき売主は印鑑証明書を提出しますが、印鑑証明書に載っている今の住所と、登記簿の住所が一致していないと、そのままでは名義を移せません。
そのため一般的には、所有権移転の前提として、まず売主の住所変更登記を行います。実務では、決済に関わる司法書士が住所変更登記と所有権移転登記をあわせて申請することが多く、売主が単独で法務局に出向くケースばかりではありません。
義務化の前から、売却時の住所変更登記は「どのみち必要な手続き」でした。義務化で変わったのは、売却の予定がなくても期限内に手続きをする必要が出てきた点です。そして売却を考えている方にとっては、手続きのタイミングを自分で選べるうちに済ませておくと、売却の段取りがすっきりする、という意味があります。
何度も引っ越していると、書類集めに時間がかかるのはなぜか
住所変更登記では、「登記簿の住所」から「今の住所」までのつながりを書類で示す必要があります。1回の引っ越しなら、前の住所が記載された住民票で足りることが多い一方、何度も住所を変えている場合は、住民票の除票(転出などで消除された住民票)や戸籍の附票が必要になることがあります。
転勤が多かった方や、売りたい家を買ってから2回、3回と引っ越している方は、つながりを証明するために複数の役所に書類を請求することになりかねません。古い住所の書類は保存期間の関係で取得できないケースもあるとされており、その場合にどう対応するかは個別の判断になります
売り出してから買主が見つかり、決済日が決まってから慌てて揃え始めると、思ったより時間がかかることがあります。書類の準備は、査定と同じくらいの時期に始めておくと安心です。
費用の目安としては、住所変更登記の登録免許税は不動産1つにつき1,000円と案内されています(町名変更など行政区画の変更による場合は、市区町村の証明書を添付すれば非課税)。司法書士に依頼する場合は、これとは別に報酬がかかります。報酬額は事務所によって異なるため、見積もりで確認してください。
「スマート変更登記」を申し出ておけば、売るときも安心なのか
2026年4月からは、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報を照会し、住所などの変更を確認したうえで、本人の了解を得て登記官が職権で変更登記を行う「スマート変更登記」も始まっています。利用するには、事前に「検索用情報の申出」(氏名・住所・生年月日・メールアドレスなどを届け出る手続き)をしておく必要があり、2025年4月21日から受け付けています。
ただし、法務局の照会は2年に1回以上の定期的なものとされています。横浜地方法務局も、売買の予定があるなど速やかに住所を変更する必要がある場合は、照会を待たずに自分で変更登記を申請するよう案内しています。スマート変更登記は「放っておいても期限を過ぎにくくなる仕組み」としては便利ですが、売却の日程に合わせて確実に登記を直したい場面では、別に手続きを考えておくほうがよさそうです。
結婚・離婚で名字が変わった場合も同じなのか
義務化の対象は住所だけでなく、氏名の変更も含まれます。結婚や離婚で名字が変わり、登記簿の名義が旧姓のままになっている場合も、変更登記が必要です。離婚にともなって家を売るケースでは、名義や持ち分、住宅ローンの整理とあわせて確認することが多くなります。この点は『離婚にともなう住宅売却で押さえておきたいポイント』でも触れています。
売却を考え始めたら、まず登記事項証明書を一度見ておく
自分の家の登記簿の住所が今の住所と同じかどうかは、法務局で登記事項証明書を取得するか、オンラインの登記情報提供サービスで確認できます。売却の査定を依頼した際に、不動産会社が登記の内容を確認することも一般的です。
確認しておきたいのは、所有者の住所・氏名が今と一致しているか、共有名義の場合は共有者全員の住所が最新か、相続した家なら相続登記が済んでいるか、住宅ローンを完済している場合は抵当権の抹消が終わっているか、といった点です。どれも売却の決済までに整理が必要になる項目で、早めに分かっていれば余裕をもって準備できます。
登記の手続きや期限、過料の扱いは、個別の条件によって異なるため、税理士・司法書士・弁護士などの専門家への確認をおすすめします。
まとめ|住所のずれは、売り出し前に片づけておく
引っ越しても登記簿の住所は変わらず、2026年4月からはその変更登記が義務になりました。家を売るときは、どのみち決済までに住所を一致させる必要があります。何度も引っ越している方ほど書類集めに時間がかかるため、売り出しの準備と同じ段階で登記の住所を確認しておくと、決済直前に慌てずに済みます。
gritでは、川崎市・横浜市の不動産について、査定とあわせて登記の内容や売却までに必要な書類の確認もお手伝いしています。手続きの細部は司法書士とも連携しながら進めるのが一般的ですので、「うちの登記は大丈夫だろうか」という段階から、お気軽にご相談ください。
