
10月に入ると、今年も残り3か月です。家の売却を考えている方の中には「どうせ売るなら年内に終わらせたほうがいいのか、それとも年が明けてからのほうがいいのか」と迷う方もいるのではないでしょうか。
この問いに対する答えは、実は相場や季節よりも先に「税金のルール」で決まる場合があります。不動産を売って利益が出たときにかかる税金(譲渡所得税)は、売った年の1月1日時点で何年所有していたかによって税率が大きく変わるためです。
この記事では、年内に売るか年明けに売るかを考えるときに確認しておきたいことを、順番に整理します。なお、ここでお伝えするのは一般的な制度の説明です。実際の税額は購入価格や経費、ほかの所得などの個別の条件によって異なるため、税理士・司法書士・弁護士などの専門家への確認をおすすめします。
「年内に売るか、年明けにするか」で税金が変わることはある
先に結論をお伝えすると、売却で利益が出る見込みがあり、かつ所有期間が「5年」や「10年」の境目に近い方は、年をまたぐかどうかで税率が変わる可能性があります。一方で、そもそも利益が出ない(購入した価格より安く売る)場合や、自宅の売却で3,000万円の特別控除を使って利益が相殺される場合は、年内か年明けかで税金が大きく変わらないこともあります。
つまり「年末までに売らないと損」「年明けまで待つべき」と一律に言えるものではなく、ご自身がどの条件に当てはまるかを確認することが出発点です。以下のSTEPで、確認の順番を整理します。
STEP1:所有期間を「売る年の1月1日」で数えてみる
国税庁の説明では、土地や建物を売ったときの所得は、売った年の1月1日現在の所有期間が5年を超えるかどうかで「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分かれます。ポイントは、実際に売った日ではなく「売った年の1月1日」で数えることです。
税率は次のとおりです(国税庁タックスアンサーより)。
- 長期譲渡所得(5年超):所得税15%、住民税5%
- 短期譲渡所得(5年以下):所得税30%、住民税9%
いずれも、これに加えて所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります。短期と長期では、税率がおよそ2倍違うことになります。
仮の例で考えてみます。2021年4月に購入した家を売る場合、2026年中に売ると「2026年1月1日時点」の所有期間は4年9か月で、5年以下=短期譲渡所得の扱いになります。同じ家を2027年に売れば「2027年1月1日時点」で5年9か月となり、長期譲渡所得の扱いになります。購入から丸5年が過ぎていても、年をまたがなければ長期にならない、という点は見落とされやすいところです。
所有期間の起点は、原則として購入(取得)した日です。売買契約日と引き渡し日のどちらを基準にするかなど、細かな判断が必要な場合もあるため、境目に近い方は登記簿や売買契約書の日付を手元に用意したうえで、税理士に確認するのが安心です。
STEP2:自宅なら3,000万円特別控除が使えるかを確認する
売るのが自分の住んでいる家(または以前住んでいた家)であれば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」が使える可能性があります。売却による利益から最高3,000万円を差し引ける制度で、利益がこの範囲に収まれば、所有期間が短くても譲渡所得税がかからないケースもあります。
ただし、ここにも「年」に関わる条件があります。すでに引っ越して空き家になっている家の場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件です。たとえば住み替えなどで数年前に転居した家を売ろうとしている方は、この期限が今年の年末なのか、来年以降なのかを確認しておくと、「年内に売るべきか」の判断材料になります。
そのほか、親子や夫婦など特別な関係のある人への売却では使えないこと、売った年の前年・前々年にこの特例などを受けていると使えないことなどの条件もあります。また、この特例は確定申告をしないと適用されません。税金がゼロになる場合でも申告が必要という点は、売却後に意外と知られていないことの一つです。
なお、親から相続した実家(空き家)を売る場合には、自宅とは別の「相続空き家の3,000万円特別控除」という制度があり、要件や期限が異なります。相続した家の売却については、別記事「相続した家を売る場合の注意点」もあわせてご覧ください。
STEP3:10年超所有・買い換えの特例が関係するかを見る
自宅を長く所有している方は、さらに別の特例が関係します。
一つは「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。売った年の1月1日時点で家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えている場合、課税される長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、所得税の税率が10%に下がります(国税庁タックスアンサーより)。この特例は3,000万円特別控除と重ねて受けられるとされています。ここでも判定は「1月1日時点」なので、購入から10年前後の方は、年をまたぐかどうかで対象になるかが変わりえます。
もう一つは、住み替えで次の家を買う方に関係する「特定のマイホームを買い換えたときの特例」です。売却益への課税を将来に繰り延べる制度で、国税庁の案内(令和8年4月1日現在法令等)では令和9年(2027年)12月31日までの売却が対象とされています。居住期間10年以上・所有期間10年超などの要件があり、3,000万円特別控除とは併用できない(どちらかを選ぶ)とされているため、どちらが有利かは個別に試算が必要です。
どの特例が使えるか、どれを選ぶのが有利かは、購入価格・売却価格・経費・次の住まいの計画によって変わります。ここは自己判断せず、税理士への相談をおすすめします。
STEP4:税金以外の「年内・年明け」の事情も並べてみる
税金の条件を確認したら、次は市場の状況や生活の都合も並べて考えます。
市場の面では、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が2026年9月10日に公表した8月度のデータで、首都圏の中古マンション成約件数は3,180件、前年同月比で10.5%減と5か月連続の減少、在庫件数は前年同月比8.2%増と6か月連続で増えたと報じられています(成約価格の前年比については報道により数値の表記が異なるため、原典での確認をおすすめします)。買い手にとって選択肢が増えている状況とも読めるため、「年内に売り切りたい」と価格を急いで決めるより、売り出し価格の設定や販売期間に余裕を持っておくほうが結果的に納得しやすいこともあります。なお、川崎市・横浜市に絞った最新の成約データはこの記事では確認できておらず、エリアごとの動きは個別の査定で確認するのが確実です(データ不足)。
また、住宅ローン金利は上昇が続いています。2026年6月の日銀の利上げを受けて変動金利の引き上げが続いており、10月のフラット35金利もさらに上がる見通しが報じられています。金利上昇は買い手の借入可能額に影響するため、今後の売れ行きを考える材料の一つになります。ただし、金利の先行きを正確に予測することはできないため、「金利が上がる前に売らなければ」と焦る必要はありません。
生活面では、引っ越しや子どもの転校のタイミング、次の住まいの購入時期、住宅ローンの残債なども「年内か年明けか」の判断に関わります。税金上は年明けのほうが有利でも、住み替え先の都合で年内に売る必要があるなど、条件同士がぶつかることもあります。そのときは、税額の差がどのくらいになるのかを試算したうえで、優先順位を決めるのが現実的です。
まとめ|まず購入日を確認し、税の判断は専門家と
年内に売るか年明けにするかで迷ったら、最初にやることはシンプルです。登記簿や売買契約書で購入した日を確認し、「売る予定の年の1月1日時点で何年になるか」を数えてみてください。5年・10年の境目に近い場合や、住まなくなってから3年の期限が近い場合は、売却時期が税額に影響する可能性があります。
そのうえで、売却でどのくらいの利益が出そうかを知るには、今の相場に基づいた査定額が必要です。gritでは川崎市・横浜市エリアの売却相談・無料査定を行っています。「いつ売るのが良いか」を急いで決める必要はありません。査定額を一つの材料として、税理士への相談や住み替えの計画とあわせて、ご自身のペースで検討していただければと思います。
※本記事の税制に関する記載は、国税庁タックスアンサー(2026年9月28日時点で確認)に基づく一般的な説明です。個別の条件によって異なるため、税理士・司法書士・弁護士などの専門家への確認をおすすめします。
