
2026年10月、大手銀行の多くが住宅ローンの変動金利・固定金利をそろって引き上げました。日本銀行が9月18日に政策金利を0.25%引き上げて1.25%としたことを受けた動きです。返済額が気になる局面だからこそ、借りた後に税金が戻ってくる「住宅ローン控除(住宅ローン減税)」をきちんと使えるかどうかは、資金計画の中で小さくない要素になります。
ただ、中古住宅の場合、この控除は「中古だから一律いくら」という仕組みではありません。同じ築年数・同じ価格帯の物件でも、住宅の性能や、手元にそろう書類によって使える上限や期間が変わります。この記事では、2026年度の税制改正後の制度をもとに、中古マンション・中古戸建てを検討している方が契約前に確認しておきたい点を一般的なケースとして整理します。
中古住宅でも住宅ローン控除は使える?──条件次第で最長13年
住宅ローン控除は、返済期間10年以上の住宅ローンを組んでマイホームを取得した場合に、毎年の年末時点のローン残高に0.7%を掛けた金額を、所得税(引ききれない分は一部住民税)から差し引ける制度です。控除率は控除期間中ずっと0.7%で、住宅の種類によって変わることはありません。
2026年度の税制改正で制度は延長され、2030年12月31日までに入居した場合が対象になりました。中古住宅(制度上は「既存住宅」と呼ばれます)については、省エネ性能の高い住宅の借入限度額が引き上げられ、控除期間も13年に拡充されています。一方で、性能の証明ができない中古住宅は、従来どおり控除期間10年の扱いです。
同じ中古でも、控除の上限は「省エネ性能」で大きく変わる
国土交通省の住宅ローン減税Q&A(令和8年度税制改正後、2026年7月更新)によると、中古住宅の借入限度額と控除期間は、住宅の性能によって次のように分かれます。借入限度額とは、控除の計算に使える年末ローン残高の上限のことです。
長期優良住宅・低炭素住宅と、ZEH水準省エネ住宅は、借入限度額が3,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は4,500万円)で、控除期間は13年です。
省エネ基準適合住宅は、借入限度額が2,000万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は3,000万円)で、控除期間は13年です。
これらに当たらない「その他の住宅」は、借入限度額が2,000万円で、控除期間は10年です。子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せはありません。
「子育て世帯・若者夫婦世帯」とは、19歳未満の扶養親族がいる世帯、または夫婦のどちらかが40歳未満の世帯を指し、入居した年の12月31日時点の状況で判定されます。
計算上の上限で比べると違いが分かりやすくなります。年末残高が十分にある場合、「その他の住宅」なら2,000万円×0.7%で1年あたり最大14万円、ZEH水準省エネ住宅なら3,500万円×0.7%で最大24.5万円です。期間も10年と13年で差が出ます。ただし実際に戻るのは、その年に納めた所得税と、住民税から控除できる範囲までです。年収や家族構成によっては上限まで使い切れないこともあるため、ご自身のケースでいくら戻るかは税務署や税理士に確認すると確実です。
「省エネ性能が高い中古」かどうかは、書類がなければ証明できない
ここが中古住宅で特に見落とされやすい点です。物件の広告に「省エネ」「高断熱」と書かれていても、それだけでは控除の上乗せは受けられません。確定申告のときに、断熱性能などの等級を証明する書類を提出する必要があります。
使える書類は、建設住宅性能評価書の写し(断熱等級と一次エネルギー消費量等級の両方が分かるもの)か、建築士などが発行する住宅省エネルギー性能証明書です。国土交通省のQ&Aでは、BELSやフラット35の適合証明書はこの証明には使えないと明記されています。長期優良住宅の場合は、認定通知書などに加えて、所有者が変わったことについて行政庁から受ける承認通知書の写しも必要です。
中古住宅で省エネ性能を証明する場合、証明のための家屋調査が「取得の日の前2年以内」か「取得の日以後6か月以内」に終わっている必要があります。築年数が経った物件では、こうした評価書や証明書がそもそも作られていないことも珍しくありません。その場合は「その他の住宅」として扱われる前提で資金計画を立てておき、性能を証明できる書類があるかどうかは、物件ごとに売主・仲介会社へ確認するのが現実的です(物件によって異なるため要確認)。
1981年以前に建てられた家は、引き渡し前の段取りが必要になる
もう一つの大きな条件が耐震性です。登記簿上の建築日が1982年1月1日以降の住宅であれば、この点の追加書類は不要です。1981年12月31日以前に建てられた住宅の場合は、耐震基準を満たすことを示す書類(耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書、既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書のいずれか)が必要になります。
注意したいのは、これらの書類が原則として「取得の日の前2年以内」に調査・評価・保険契約が済んでいる必要があることです。つまり、引き渡しを受けた後に「やっぱり控除を使いたい」と思っても、基本的には間に合いません。国土交通省のQ&Aでも、耐震基準適合証明書は通常、売主が申請することが想定されるとしています。築年数の古い中古戸建てやマンションを検討する場合は、購入申込みや契約の前の段階で、売主側が対応できるか、費用や日程をどうするかを話し合っておく必要があります。
耐震基準を満たさない住宅でも、引き渡し前に所定の申請をした上で、取得後に耐震改修工事をして入居前に証明書を受け取れば、控除の対象になる場合があります(いわゆる「買って耐震」)。手順が細かいため、検討する場合は早めに建築士や仲介会社に相談してください。
面積・所得・入居時期、どこでつまずきやすいのか
性能や耐震性のほかにも、次のような条件があります。
床面積は原則40㎡以上です。ただし合計所得金額が1,000万円を超える年や、子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せを使う場合は50㎡以上が必要です。マンションの場合、判定に使うのは登記簿上の専有面積(壁の内側で測る「内法面積」)です。販売図面に載っている面積は壁の中心で測る「壁芯面積」であることが多く、登記簿の面積はそれより小さくなります。広告で50㎡ちょうど程度の住戸は、登記簿で50㎡を下回っていないか確認しておくと安心です。
所得については、合計所得金額が2,000万円以下の年に控除が受けられます。夫婦でペアローンを組む場合、この判定は2人の合計ではなく1人ずつ行われます。
そのほか、引き渡しから6か月以内に住み始めること、返済期間が10年以上のローンであることも条件です。返済期間9年のローンでは対象になりません。
金利が上がる局面で、控除をどう位置づけるか
住宅ローン金利が上がると、毎年支払う利息は増えます。一方で控除率は0.7%で固定されているため、「控除があるから金利が上がっても大丈夫」と考えるのは危険です。控除はあくまで納めた税金の範囲で戻ってくるもので、返済そのものを肩代わりしてくれるわけではありません。
控除の上限が大きい物件を選ぶこと自体は合理的な判断の一つですが、控除を見込んで借入額を増やすのは慎重に考えたいところです。まずは控除が「その他の住宅」の水準でしか使えなかった場合でも無理なく返済できるかを確認し、上乗せが受けられれば余裕が増える、という順番で考えると、金利がさらに動いたときにも計画が崩れにくくなります。返済額の考え方は、別記事「住宅ローンの返済シミュレーション」でも詳しく解説しています。
年内に入居するか、年明けになるかで手続きの時期が変わる
秋に物件を決めると、引き渡しや入居が年末をまたぐかどうかが気になる時期でもあります。住宅ローン控除は、入居した年の翌年に確定申告をして初めて適用されます。国土交通省のQ&Aの例では、2026年10月に引き渡しを受けて入居した場合、2027年2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。会社員など年末調整の対象者は、2年目以降は年末調整で手続きできます。
また、子育て世帯・若者夫婦世帯に当たるかどうかは入居した年の12月31日時点で判定されます。年をまたぐと年齢の条件が変わる方は、入居時期と判定の関係も念のため確認しておくとよいでしょう。
なお、ここで紹介した内容は制度の一般的な仕組みです。実際に控除が受けられるか、いくら戻るかは、物件の書類や所得、家族構成などによって変わります。個別の条件によって異なるため、税理士・司法書士・弁護士などの専門家への確認をおすすめします。
まとめ|物件を決める前に「控除の区分」と「書類」を確かめておく
中古住宅でも住宅ローン控除は使えますが、上限額や期間は、省エネ性能を証明する書類があるか、耐震性の条件を満たしているかで変わります。特に1981年以前の建物の耐震関係の書類は、引き渡し前に準備しておく必要があるため、契約が近づいてから気づくと間に合わないことがあります。
川崎市・横浜市で中古マンションや中古戸建てを検討している方は、気になる物件が見つかった段階で「この物件はどの区分になりそうか」「必要な書類は誰が用意するのか」を一緒に確認していきましょう。物件探しやローンの組み立て方も含めて、gritにお気軽にご相談ください。
